takabailandoのブログ

I hope this is like TEDxMe+: ranging from numeric programming to business value proposition.

重要とはいえなかなか投資が進まない日本のAgriTech

食・農・健康の3本柱でなにかできないかと模索しつつ、空間解析・ビッグデータ・経営戦略を仕事としてきた地理学野郎にとって、とても面白い記事があったので更新することにしました。記事は↓で、「農業テックのデータによるソリューション:リモートセンシングスタートアップとのインタビュー」という記事をベースに考えてみました。

geoawesomeness.com

最近「精密農業(Precision FarmingとかSmart Farming」という言葉が脚光を浴びています。精密農業自体いろんな観点で理解・実践されていますが、今回の記事はそういった主流とは毛色の違ったやつで、かつ、農家で育った自分にもしっくるくる、内容だなと感じました。

自分はデータを使った事業企画・戦略・実行をお手伝いさせて頂いてることもあり、現場に色々と感じることがあります。技術とかデータというのはこれからの経営戦略上非常に重要なものだとは思いますが、それは単なるツールであって、結局「誰に何をどうやって」持続的に提供するのか考え抜く以外大事なものはあまりない、ということ。でも、多くの農業ベンチャーは技術でなんとかできる!という視点から突き進んでる感じもします。イノベーションは異業種から起きると言われますが、コントロールが難しい天気や微生物などを相手にする農業ってのは、一風変わった、でも誰もが絶対に関係する領域だということも理解されるべきではないでしょうか。

ま、いずれ重要になることは分かってるから投資対象にもなっていますが、農業生産者が理解できないサービスを展開したり、投資資金を集めている起業も多そうに感じてしまいます。一方で、農業生産者側も進歩している技術を積極的に触れていく形にしていくべきかとも思います。

A lot of people in the market think that big data, including but not limited to remote sensing and other geo-data, will take agricultural productivity to the next level. Or at least, simplify a lot of complex processes. However, currently the farmer itself has no real advantage from these new developments.”

農業市場にいる多くの人は、ビックデータ、リモートセンシングや他の地理データ、を使えば農業生産性を高めてくれると考えています。もしくは、少なくとも複雑なプロセスを簡素化してくれるもんだと思っています。しかし、現状では、農家自体そういった新しい技術の恩恵を受けることはあまりないのです。

ですが、家庭菜園でも難しいと感じてる人が多いこの作物栽培を大規模にかつ安定供給しなくてはいけない生産者は、天気や天候、土壌状態、土壌微生物の動き、コンパニオン植物との組み合わせ、受粉してくれるエージェント、施肥、水管理、などなど、把握すべきことが多いのです。ただ技術採用コストや教育コストが高くつくだけで、「実際なにをすればいいか提示してくれるサービス」が少ないのも事実。自身の圃場1つを理解するのも大変なのに、違う場所にいけば違う形の大変さが生まれます。工業製品であれば、製造工程の一部または全部を、地理的&時間的制約なく、比較的スムーズに他製品の製造工程に流用が可能だったりしますが、農業となると施設園芸は別としてそう簡単にもいかないからこそ、どうすれば技術を使って効率化できるか期待されています。 

”If we would have to pay for the data, I think we wouldn’t exist right now.”

もしデータにお金を支払うことになってたら起業してうまくいくとは思えません。

そこで個人的に重要になると思うのは、農業においても「データは無料に」しては如何だろう、と。データビジネスにおいて初期段階ではデータ処理に大半のコストがかかるもの。そこをデータレイクというスキームでデータ処理やサーチ部分を賄い、各自が農業知能開発に専念できるようにすればいいのかなと思っています。このデータは政府が作る統計データだったり、農業生産者が共有する作業データだったり、自家用車や運送業が逐一集める気候データだったり。データビジネスというのはデータで飯を食うのでなく、データから産まれるもので飯を食べていくものだと思っています。

 

最近はオープンデータとかオープンソースをベースにした開発が主流になっています。農業においてはもっとオープン化を進めて、人口増加以上の生産量増加、または人口増加を相殺するほどの物流効率化や食品ロスの低減、が期待されています。日本では、残念ながらAgriTechよりもFoodTechという食の下流に多くの資金が流れています。ある程度の初期投資が必要となるAgriTechの重要性と収益性を投資家に理解して頂きつつ、農業という”独特な”産業を熟知した投資家や成功事例を作ってかないといけないなと痛感している今日この頃です。